仕事を受けたくない人の話(2) 捕まらなきゃいいんだろ(超意訳)
数年前、Aさんの公正証書遺言書作成のお手伝いをしました。
遺言書の内容はザックリ、次の通り。
・全財産を、X公益団体に遺贈する
・遺言執行者に☆KEYを指定する
Aさんが亡くなり、相続人のBさんが騒ぎ出した。
(1)「全財産をX公益団体に取られるなんて、あり得ない!」
→ご指摘の通りです。もちろん、遺留分があります。
(2)「遺言書を書くなんて聞いてない。勝手に作る権利があるのか?」
→15歳以上で遺言能力があれば、誰の許可も要りません。
(3)「こんな遺言書は無効だ。お前は詐欺だ。」
→認知症など、遺言能力に疑いがあれば無効の可能性はありますが、
それは詐欺とは違います。
例えば、霊感商法の団体とグルになって、そこに全財産を
遺贈するような遺言書を作らせたなら詐欺かもしれませんが、
X公益団体では詐欺には当たらないでしょう。
(4)「警察に訴えてやる」
→(1)~(3)のように、やましい点は全くないので
「どうぞ警察に訴えてください」と返しました。
Aさんはこちらの話を聞いてみて、
法律上は問題なさそうだとは分かったものの、
まだ納得いかない様子。
「自分は法律が分からないのをいいことに、騙しやがって」
みたいな態度が続きます。
・家族を亡くした苦しみ
・突然現れた、訳の分からない遺言書
・色々疑問に思う点が
この辺りもあり、思いの丈をぶつけてきたのでしょう。
じゃあ、遺言書を作る時に相談していたらどうだったか。
その時点で同じことを言われたんじゃないかな。
しかし、Bさんは理系の博士で勲章を受章するような方。
騙されたままで黙っている訳に行くもんか。
それ以外の方策はないのか?の突っ込みが入る。
(5)「遺言書、遺言執行者は法律で決まっているのか?」
→民法上の手続きである旨を説明。
(6)「民事ということは罰則はないのか?」
→遺言書を毀損・偽造すれば罰則はあるが、
公正証書遺言の原本は公証役場にあるので問題ない。
手続を怠っても、損害賠償の請求くらい。
(7)「弁護士に『X公益法人に全財産を取られることはないし、
手続きは自分でやればよい』と言われた」
→遺言執行者がいると自分では手続きできないので、
回答の前提が違っているのではないでしょうか。
その場合でも、弁護士と相談しながらやって頂ければよいです
どんなパターンがあるのかは、最終的にこちらから提示したのですが、
大雑把にまとめると、以下の方針を考えているとのこと。
「法律上はそうなっているかもしれないけれど、
別の法律ではそうなっていないんですよね。
遺言執行者はキャンセルして、別の法律のやり方でやります」(超意訳)
手続きを理解した上で
「捕まらなきゃいいんだろ。最悪、金を払えばさ。」(超意訳)
こんな理屈を主張されたら
「お好きにどうぞ」としか言いようがないですね。
敢えて逆らって、粛々と遺言執行するという解もあるにはある。
しかし、この仕事だけに無限のリソースを費やす訳にはいかないし、
論破するために仕事やっているのでもない。
Aさんの遺志を継ぐことはできなくなりますが、自分の人生の方が大事。
遺言執行者を辞退しました。
先日の「手順を守らない人」と似たような位置付けですが、
「書類は出さないけど金をくれ」と無茶を言う訳ではなく、
自分でリスクを背負うなら、いいんじゃないですか。