あのオヤジ、というかジジイ、実行犯ではないかも知れないが、関係あるぞ。警察に届けるか、などと話しながら山沢のマンションへ向かう。
「今晩は、警察ですが。」
暗闇の向こうから警官が近づいてくる。よく見ると、正司が死んだ時に最初に駆けつけた警官だ。
「何だ、お巡りさんですか。」
「捜査の邪魔は止めて下さい。」
「え、何ですか。」
「あの男は我々の方でマークしています。」
やはり、あのオヤジが犯人なのか。
「これは失礼しました。」
山沢は素直に謝る。警察に届けるまでもなかった。
「では、後は我々に任せて下さい。」
警官は男のアパートの方へ歩いていった。
警官が見えなくなるとすぐ、野馬が
「警察があてにならないから、こうやって俺達が調べてるんじゃないか。」
そうは言っても、しばらくは様子を見ることにして、山沢、原田、野馬は別れた。
キーッ、ドーン。山沢が家に帰って一時間くらい経った頃だろうか。急ブレーキの音と、車が何かに当たったような音がした。交通事故か。痛ぇー! 男の悲鳴も聞こえてくる。そのうち救急車が来るだろう。
それから二十分経っても救急車のサイレンが聞こえない。どうしたのか。山沢は表に出てみた。
「痛ぇー。」
声のする方へ行くと、男が倒れている。
「大丈夫ですか。」
と声を掛けた山沢。
「え。」
倒れていたのは、さっき会ったばかりの、警察もマークしている男だった。
「助けてくれー。」
「待ってて、すぐ一一九番しますから。」
すると、少し離れた所から声がする。
「大丈夫ですよ、さっき一一九番しました。」
程なくして、ようやく救急車が到着。時を同じくして、近所の交番からバイクの警官も駆けつける。さっき声を掛けてきた警官だ。またお前かよとでも言いそうな、うんざりした顔をしている。
救急隊員が男を救急車へ運び込もうとすると
「お巡りさん、助けて下さい。」
男が警官に懇願する。
「どうしました。」
「あいつらが襲ってくるんです。」
「お願いしますよ。」
救急隊員も警官もそれには応えず、男は救急車に乗せられた。ピーポーピーポー。救急車は病院へ向かって出発した。
それと入れ替わりに、パトカーが到着。
「連絡をくれたのはどちらですか。」
現場に残った警官が山沢と一一九番した人に訊く。
「私です。」
一一九番した人と警官が話し始めたので、山沢は家へ帰った。
二人目の犠牲者なのか。遺留品はないし、他に証拠もない。象の鼻とコスモスペースがどう考えても怪しいんだけどな。その両方に関連してるジイさんが急に車にひかれるなんて。ここは、サーバーに忍び込むしかないな。
次の日、山沢はインターネットカフェへ行った。象の鼻のサーバーにアクセス。IPアドレスは分かってるから、あとはそこから攻めていこう。Webサーバーソフトの種類は…。おう、間抜けな野郎め、随分古いバージョンだ。これはハッカーさん、いらっしゃいって言ってるようなものだぜ。
まんまと象の鼻のコンピューターシステムに入り込むことができた。色んなファイルがあるぞ。このファイルが怪しいな。ファイルの中身を見てみる。やっぱり。そこにはコスモスペースの資料もあった。なるほど、象の鼻とコスモスペース、こいつらグルになってやがる。関係ありそうなファイルをダウンロードすると、侵入した形跡を消す。警察へそのファイルを転送すると、インターネットカフェを後にした。
象の鼻とコスモスペースが一体であることは分かったが、正司の死に関しては特に資料は見つからなかった。強いて挙げれば、正司の大学時代の友人、竹崎の名があったことぐらいか。
ジイさんにもう一度会ってみるか。といっても、どこの病院にいるのか。警察に訊くとうるさそうなので、とりあえず市立病院に電話する。
「もしもし、昨日交通事故で老人が運ばれていませんか。」
「ご家族の方ですか。」
「はあ、家族ではなくて、親戚ですが。」
ジイさんは市立病院に入院していた。親戚を装って、部屋番号を教えてもらった。
翌日、会社の帰りに市立病院へ寄り、教えられた病室へ。ところが、ジイさんの姿は見えない。病室の名札を見ても、ジイさんの名前はない。
「あのう、一昨日交通事故で入院した…。」
通りかかった看護婦に尋ねる。
「ああ、今日退院しました。」
二日で退院か。かなり痛そうにしてたのに、怪我はなかったのか。それとも、入院費が払えそうもないから帰ったか。借金に追われている身だし。あるいは当たりやなのか。
市立病院を出て、ジイさんのアパートへ。ところが、ジイさんは部屋をを引き払っていた。
ジイさんのアパートを出ると、外には三人組の男がいた。以前、ジイさんの部屋にいたコスモスペースの奴らのようだ。
「おい。」
一人が山沢に声を掛ける。いきなり『おい』とは失礼な奴らだ。
「何だい。」
「俺達は象の鼻の者だ。」
この間はコスモスペースと言っておきながら、今度は象の鼻か。
「あのジイさん、知らねえか。」
知る訳ないだろ、来てみればもぬけの空だぞ。
「知らないよ、こっちが訊きたいよ。」
「そうかい、それじゃあな。」
コスモスペースと象の鼻で抗争でもあったのか。
つづく (C)二〇〇一 星 期一
裁判は熱い
弁護士のユースケ、検事のキムタク、行政書士の陣内、そしてニセ弁護士の役所幸司。法律ドラマが流行るのも、それだけ世知辛い世の中ってことなんだろうな。実際、ドラマの中だけでなく、個人で裁判やって刑事、民事とも勝ったりしてる友人も身近にいます。
と、ホットなところに届いた案内。裁判所を見に行こうツアーだ。これは行くっきゃない。ということで、ゴールデンウィーク真っ最中の五月一日メーデーに、慶應のスクーリング仲間の司法書士に連れられて横浜地方裁判所の傍聴に行ってきました。
裁判はドラマ
傍聴したのは刑事裁判。女子高生をピストルで脅して援助交際。その時、警察手帳まがいの物を見せて警察だと偽って、金を値切ったり。更に、一緒に遊んでいた会社の同僚からビデオデッキ代(何だこれ?)として何十万かもらったと。奥さんも証人として出てきて、反省してますからと訴える。
弁護士が「被告人は心臓病で死の恐怖から逃れるため…」と主張すると、「そうだ、被告人も反省してるんだ、許してやれよ」と思ってしまう。
けど、検事が「○○さんは(女子高生の本名が出てくるんですね、驚いた)嫌だと言っていたのですよ」と主張すると「こいつ、とんでもねえ奴だ。お前なんか厳罰だ」と思ってしまう。これを裁く裁判官も大変だなあ。
通常であれば当事者しか傍聴しないだろうところ、傍聴に来た連中がゾロゾロと入って、関係者も何事かと思っていたのではないだろうか。そうか、そんなに大事件なのかと、改めて認識したことでしょう。
そして判決
気になる判決ですが、そこまでは見に行きませんでした。執行猶予中の悪さだから、実刑判決が下ったのではないでしょうか。
裁判の傍聴はいたって簡単。また機会があれば行きたいと思います。傍聴はいいけど、自分が被告人になるのはごめんですね。
○質問○
元国務大臣です。
某宗教団体に頼んで党員を1万人集めてもらいましたが、その1万人が「幽霊党員」だということが判明してしいました。信心が強ければ幽霊を生き返らせることができると思いますが、私は信心が足りなかったのでしょうか。《金髪修正委員長》
○回答○
アナタハ神ヲ信ジマスカ。
モット祈リナサイ。
《幸福の伝道師 ザビエール》
○質問○
構造改革とか、痛みを我慢しろとかよく聞きます。それは本当に痛いんでしょうか。痛いのは嫌いです。弱い者をいじめたり切り捨てるなんて許せません。まして斬り殺すなんて、信じらんない。
《小学校の元職員》
○回答○
構造改革という話とは関係なしに、学校をどう守ろうかという話題でしょうか。まず、それを明確にしてね。
《編集者》