1999年10月号
メビウスの輪
第1回
メビウスの輪 星 期一
一、落下事故 十一月一日の未明、マンションの階段をゆっくりと上っていく二人の人影。しばらくすると、そのうちの一人が階段を下りてくる。一人の人影がマンションから出てくる。ほとんど同時に、ドスンという鈍い音。マンションから遠くへと走り去る足音。そして、静けさが戻る。 ピンポン。ドアのベルが鳴る。誰だ、一体。今、何時だよ。寝ぼけまなこのまま、玄関へ向かう。 「はい。」 「警察です。」 え、警察?何か悪いことしたか?何の事件だ?訝しがりながら扉を開けると、二人の警官がいた。 「お休みのところ申し訳ありません。」 警官は、ドラマのように警察手帳を差し出した。 「近くで事故がありまして。事故にあった方の身元が分からなくて、調べているところです。」 警官は、特徴を話し始める。身長百六十センチ位、痩せ形、スポーツ刈り、青いジャージを着ている。 「こういう方をご存じありませんか。」 「あ、うちの弟がそんな感じですけど。」 「今、そちらにいらっしゃいますか。」 「はい、いると思いますけど。」 「確認していただけますか。」 山沢は弟の部屋のドアを開ける。しかし、そこに弟の姿はない。 「いませんでした。」 「そうですか。ちょっと来て下さい。」 警官は山沢を階段の踊り場に連れていく。外を見ると、マンションの下に人が倒れている。 「あの方をご存じありませんか。」 ご存じも何も、弟の正司じゃないか。 「うちの弟です。」 何だ、正司が倒れてるぞ。 「ちょっと待って下さい。」 急いで家に戻り、寝ている母親を叩き起こす。 「正司が、正司が大変だよ。」 山沢は母親を踊り場まで連れていく。驚く母親。 「それでは、確認していただけますか。」 |
母親に確認させるのは酷だからか、警官は山沢を連れていった。
「間違いありませんか。」 「そうです、弟です。」 機動捜査隊が来て、現場検証が進められている。最上階の踊り場の手摺りに、正司の指紋があったらしい。争った様子もなく、自殺ではないか。 「それでは、仏さんは検死しますので。」 死体は連れていかれた。型通りの事情聴取。 「では、後で警察に来て下さい。」 警官は署へ戻って行く。 人が死んだら、何をしなきゃいけないんだ。あ、オヤジに連絡してないぞ。夜勤の父親、そして近くに住む親戚に連絡。誰に電話。その前に警察か。山沢は母親を車に乗せると警察へ向かった。 警察での検死が終わり、車を止めた場所へ戻ると、名刺を差し出してくる男がいる。 「川口葬儀社です。お世話になります。」 この葬儀社の車で警察まで死体を運んだとのこと。 「車代はサービスしときますから。」 「はあ、よろしくお願いします。」 家に戻ると、弟の携帯が鳴っている。 「もしもし。」 「あれ、山沢さんですよね。」 「ああ、はい、正司の兄です。」 「正司さんは?」 弟はその日、鳥取大学の学園祭で行われるミホのコンサートに行くことになっていた。 「あれ、ひょっとして野馬君?」 「はい。」 「正司は、コンサート行けなくなったから。」 「そうですか。」 「また、詳しいことは連絡しますから。」 よく分からないまま、その川口葬儀社に決めてしまった。お寺さんはどうなんだ。大体、うちの宗教って、仏教だろうけど、宗派は何だ。お寺ならどこでもいいか。親戚に電話して訊いてみると、日蓮宗だという。早速、葬儀屋に連絡。しばらくすると、お寺さんが見つかったと行って、葬儀社の人間がやってきた。 |
通夜、葬儀の日程、場所、どのような式にするかを決め、親戚やら、会社やらに連絡。正司の友人にも連絡する。ミホ関係の友人の野馬、高校時代の友人の原田。大学や会社の友人にどんな奴がいたのか分からないので、そこは連絡しなかった。
伊丹十三のお葬式、ちゃんと見とけば良かったな。ぶっつけ本番か。父親がぶつくさ言う。 しばらくすると、山沢の携帯が鳴る。 「はい、山沢です。」 「草加です。お前、弟が死んだんだって。」 「おう。」 「それはご愁傷様。」 「どうも。」 「ところで、お前んとこ、日蓮真宗だっけ。」 「違うよ、日蓮宗だとか言ってたけど。」 「それは謗法だから、葬式は出ちゃダメだぞ。」 「何言ってんだよ。」 「もし出ても、変なお経なんか上げるなよ。心の中でずっと『南無妙法蓮華経』を唱えとけよ。」 それだけ言うと、電話は切れた。 お通夜、葬式と滞りなく済む。正司の死因については全く分からない。脳挫傷で死んだということは死亡診断書で分かるが、なぜ死んだのか。S県警は例によって職務怠慢で、事故なのか事件なのかも調査しようとしていない。遺書が見つかれば自殺で一件落着なのにな、なんて言っている。さすがに遺書の偽造まではしなかったようだが。 「納得いかねえな。」 山沢がつぶやく。隣にいた野馬が 「何がですか。」 「だって、携帯のメモリーが消えてるんだよ。」 弟の携帯にかかってきた野馬からの電話は、番号通知されていたのに名前が出ていなかった。不審に思って調べてみると、メモリが一件もされていなかった。前は百件くらい入っていたはずなのに。 「それは変ですねえ。」 「それに、手帳もなくなってるんだ。」 「盗まれたんですか。」 「というか、破られてた。」 つづく |
じゃマ〜ル活動 第12弾
『ドナルドの飼育係』
今回は留学生交流会のはずが、どういう訳でドナルドが出てくるんだって? そう慌てなさんな。 中国からの留学生との交流活動をしているのが、川崎に住む宮崎さん、女性。当時、中国からの留学生とつきあいがある人が近くにいたもんで、「中国」「留学」というキーワードにピンときたわけ。彼女がホームパーティーをするってんで、お邪魔してみました。日吉駅で待ち合わせ。総勢10数名。駅から歩くこと20分、坂を上ったり下ったり、どこまで連れて行く気か、と言う頃にようやく着きました。案内されたのは、アパートの一室。え、ここにみんな入るの? 靴は玄関に入りきらないから、廊下に出しっ放し。テーブルの周りは二重にもなって、かなり窮屈。 |
まずは乾杯の後、初めに自己紹介。じゃマ〜ル活動が身に付いていた☆KEYは、名詞代わりのQSLカードを配りつつ、みんなの連絡先を訊いていた。その後、いつもの如く、誰にも連絡してないけど。そこで出会った奴、名前は忘れたけど、名詞に『ドナルドの飼育係』と書いてあった。ディズニーランドに勤めてるんだっけ。その印象が強かったんで、タイトルに使いました。
海外留学の経験者、そうでない人が半々くらい。外国の人もちらほらいました。これから中国へ行きたいけどアドバイスを、など、留学したい人の情報交換、中国から日本に留学している人との交流の場の紹介などがありました。また、海外へ行ったときのアルバムを回覧。台湾はどこのホテルは高いけど、その裏通りに行くと安いよ、とか。もう瓦礫の下となっているかも知れない。 |
何を食ったかも覚えてないけど、無国籍料理と言った感じか。幹事の宮崎さん手作りの料理の他、差し入れもあったかな。お酒は、ビール、日本酒などのほか、紹興酒があるはずだ、中国なら。
そんなこんなで、昼過ぎから夕方にかけてのパーティーは終わりました。飼育係が「二次会へ行こう」と誘ったけど、みなさん用事があるようで、流れ解散となりました。 宮崎さんからは次の集まりのお誘いがありましたが、断ってしまい、それっきりです。 宮崎さんの入っていた団体の資料など、どっかに行ってしまったんで、ちと分かりません。日中留学生友好協会?勝手に名前作ってるぞ。どんなパーティーだったかも、あまり書いてないし、活動報告としては物足りないな。まあ、ページ稼ぎと言うことで、見逃して下さい。 じゃマ〜ル活動は、また思いついたら書きます。次回は未定。 |